友人との口論で、ついカッとなって相手を殴ってしまう… いうのは、大人の世界でもよくあることです。
しかし、あなたの殴った相手が、後日「警察に被害届を出す」なんて言ってきたら…?
正しい対処法を知らないと、最悪の場合、相手から多額の慰謝料や医療費を請求されてしまう可能性があります。
そこで今回は、あなたが殴った相手から「被害届を出す」と言われた時の対処法についてご紹介していきます。
なぜ被害届?
まず、あなたに対して「被害届を出す」と言う相手の心理を考えてみましょう。
単純に「これから被害届を出しに行くよ」っていう意味ではないことは明らかですよね。
これは、「お金を出させようとしている…」と見るべきです。
つまり、「被害届を出されたくなかったら、慰謝料を払いなさい」…ってことです。要は、脅しなんです。
下手(したて)に出てはいけない
ここで、あなたが下手(したて)に出てしまうと…
「むちうち症になったから、入院する」なんてことを言われた時に、引っ込みがつかなくなってしまいます。
「ちょっと殴ったぐらいで入院?」と、思うかもしれませんが、むちうち症は「痛い」と本人が演技をすれば、簡単に入院させてくれることがあります。
そのため、「慰謝料はいかほどでしょうか…」なんて聞いてしまうのは絶対に禁物です。
「ちゃんと謝ってるじゃないか!被害届?出したければ出せば?」
…ぐらいのスタンスでいた方がちょうどいいんです。
相手からのメールや電話は残しておく
もしもあなたが、殴った相手から「被害届を出す」と言われた時は…
まず、相手からのメールはすべて保存しておきます。また、電話も録音アプリなどを使って録音しておきましょう。
これは、相手があなたを「脅迫」している可能性があるからです。
最も多いのは、「被害届をチラつかせてあなたをビビらせ、示談を認めさせる」…というケースです。
一般に、示談というのは「訴えられている側(あなた)」が提案すべきものです。
「殴った医療費として、2万円ほどで示談にしてくれませんか」と、あなたの方から持ちかける…ってことです。
相手を脅迫で訴えることもできる
でも、相手の方が「被害届を出されたくなかったら、示談にしろ」とあなたに迫るのは、脅迫罪になることがあります。
こうなれば、逆にあなたが相手を「脅迫罪」で訴えることもできますから、とりあえず、相手からのメールはすべて保存しておきましょう。
では次に、相手が本当に被害届を出した… というケースを考えてみましょう。
起訴は検察が行う
世間ではあまり知られていませんが…「起訴」というのは、警察ではなくて「検察」が行ないます。
警察は、被害届を検察へ回すだけです。
ですので、仮に相手が警察に被害届を提出したとしても、その被害届の内容を起訴するかどうかは、検察が決める…ってことなんです。
起訴されないことも多い
でも、友人との口論でついカッとなって手が出てしまう… なんてことは、日常生活ではいくらでも起こりうることですよね。
それを、警察や検察がいちいち対応していたら、時間がいくらあっても足りません。
ですので、あなたに殴られた相手がよほどの深刻なケガをしない限り…
軽いカスリ傷程度なら、検察もわざわざ起訴しません。
それに、もしも友人同士の喧嘩なら、被害届の時点で警察がまともに話を聞いてくれない可能性だってあります。
特に、初犯であれば、「執行猶予」どころか、起訴すらもされない「起訴猶予」になることがほとんどなんです。
ですから、「被害届」を恐れる必要はありません。
恐れるべきは、むしろ、相手からズルズルとお金を要求され続けてしまうことです。
次に、仮に起訴されたとして、どのような罪になるのか… ということについて見ていきましょう。
暴行と傷害の違いは?
「暴行罪」と「傷害罪」、聞いたことありますよね。
この2つ、実はそれぞれ、内容や罰則が全く違うんです。
「暴行罪」とは、相手に暴力を振るった、という罪。
「傷害罪」は、相手に対し、深刻なケガや骨折などをさせた、という罪です。
では、法律の条文を見てみましょう。
2年以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
●傷害罪
15年以下の懲役、または50万円以下の罰金
…のように定められています。
見ての通り、暴行罪よりも傷害罪の方が罪が重いんです。
つまり、相手にケガをさせてしまうと、傷害罪になる可能性もありますが…
相手がケガをしてなければ、仮にあなたが起訴されても、傷害罪ではなく「暴行罪どまり」…ってことです。
暴行罪なら、ほとんどの場合は不起訴になるか、罰金を支払えば終わりです。
罰金を科せられると、いわゆる「前科あり」になりますが、公務員試験や一部の資格取得に制限が加わる程度で、日常生活には支障はありません。
本当に、殴ったことが原因なの?
では、仮に、相手が「ケガをした」と言ってきたとして…
「あなたが殴った」ことと、「相手が今ケガをしている」こととは、本当に因果関係があるんでしょうか?
実は、全く関係がないかもしれないんです。
相手は、あなたが殴った翌日に、自分で階段から落ちただけ… という可能性もあります。
証明するのは相手の責任
仮に相手が「ケガをした」なんて言ってきたとしても、「私のせいです」なんて認めてはいけません。
「殴られたからケガをした」ということを証明するのは、あくまでもその人、つまり相手方の責任なんです。
ですので…
「ついカッとなってしまったことは謝る。でも、今、お前がケガをしてるのは本当に俺のせいなの?」というぐらいのスタンスでちょうど良いです。
決して下手(したて)に出ることなく、「そんなカスリ傷、わざわざ医療費なんて負担しないよ。どうしても出してほしければ、民事裁判でも何でもすればいい」
…という態度を貫くのがベストです。
裁判を恐れなくてもいい
それに、相手だって、だかだか数万円の医療費や慰謝料のために、普通は民事裁判なんてしません。
裁判費用のほうが、高くついてしまうからです。
それに、先ほどもお話ししたとおり、友人同士の喧嘩で、なおかつ初犯であれば、不起訴になることがほとんどです。
仮に起訴されたとしても、暴行罪の場合、罰金の上限は30万円なのですから、「それなら罰金を払って終わりにした方がいい」って思いませんか?
相手の言いなりになって示談して、慰謝料をしぼり取られ続けるより、よっぽどマシです。
まとめ
いかがでしたか。
実際のところ、暴行罪で起訴されるよりも、相手の言いなりになって医療費や慰謝料を負担させられる方が、実害は大きいと言えます。
世の中には、ほんの些細なケガで何日も入院してみたり、ありもしない「後遺症が…」なんてことを言い出す人もいますから、「示談にしよう」なんていう申し出を受け入れるべきではありません。
また、あまり強引に示談を迫ってくるようなら、今度はあなたが相手を訴えることだってできます。
あなたはむしろ、「ちゃんと謝ってるじゃないか、訴えたければ、訴えればいいよ。」…というスタンスで、落ち着いて堂々としておくようにしましょう。