「無断駐車は罰金5万円申し受けます」…個人の有料駐車場で、こんな看板を見たことはありませんか?
確かに迷惑駐車は良くないことですが、それにしたって5万円というのは… ちょっと高過ぎますよね。
で、この5万円、果たして本当に払わなくちゃいけないんでしょうか…?
今回は、こうした「無断駐車の罰金」を本当に払う必要があるのかどうか…?
そして、このテーマを考える際に最も重要な「民事不介入の原則」というものについてご紹介していきます。
正当な値段ではない
まず、結論から言えば、無断駐車をした際に地主から請求される5万円は、「その場ですぐに」払う必要はありません。
第一の理由としては、5万円という金額が「正当な値段」ではないからです。
例えばあなたが、友人の家で机の上に置いてあったお菓子を食べたとします。
しかし、よく見たら、壁に「お菓子1つ5万円」と書かれてある… あなたは、その5万円を友人に支払いますか?
誰だって、「このお菓子、5万円もするの?バカじゃないの?」って思いますよね。
払わないのが当たり前で、払うとしても、あなたはせいぜいそのお菓子がスーパーで売られている定価の値段で友人に弁償するはずです。
5万円は高すぎる
つまり、冒頭の件は、「無断駐車によって地主に迷惑をかけたことわかった。でも5万円という値段はさすがに高すぎる…」ってことなんです。
ですので、もしもあなたが実際に地主から5万円を請求されたなら…
「そんなに5万円が欲しいなら、裁判でも何でもすればよろしい。私は5万円など支払うつもりはありません」ときっぱり答えるようにしましょう。
民事不介入の原則
法律の世界には、「民事不介入の原則」という考え方があります。あなたもおそらく耳にしたことはありますよね。
「民事」というのは、「私人間のいざこざ」のことです。
つまり、公権力である警察は、国の決まりを破る人には介入するけれども、個人同士のいざこざには介入しませんよ…ってことなんです。
例えば、道路に「駐車禁止」の標識が立てられているとします。
この標識は、国が置いたものですから、「駐車禁止」の標識があるところに駐車するというのは、道路交通法違反、つまり国の法律に違反していることになります。
こうなるともちろん、警察が介入します。
違反車に対し切符を切り、レッカーで移動し(最近は見かけませんが、以前はガンガン持って行かれたものです…笑)、そして反則金も徴収しますよね。
でも、「私の土地に無断で駐車したら、5万円をもらいます」というのは国の法律ではありません。
地主が勝手に作った決まりですよね。
ですので、「払わないと警察を呼ぶぞ!」というのはただの脅しで、あなたが5万円を払わなかったからといってすぐさま警察が飛んでくる訳ではなく…
ましてや、警察が「無断駐車の罰金5万円を払いなさい」なんていうことはありえない、ってことなんです。
ただし、本当に警察が来てしまうと、「住居不法侵入」などで訴えられる可能性はありますが、少なくとも「即金で5万円」なんてことはない、ってことです。
自力救済の禁止
また、法律全体を貫くもう一つの重要な考え方として、「自力救済の禁止」という原則があります。
これは、読んで字のごとく、「自力でいざこざを解決する」ことを禁止したものです。
つまり…
「何かいざこざがあったからといって、暴力などの『自分の力で』それを解決しようとしてはいけませんよ。裁判に訴えるなど、国の定める正当な手続きを踏んで解決するようにしましょう」
…という意味です。
分かりやすい例で言うと、『北斗の拳』のように、腕力で解決するような世界になってはダメですよ… ということです。
ですので、今回のテーマである「無断駐車の罰金5万円」というケースで言えば…
地主が、土地に無断で車を止めたあなたに対して、「5万円を支払ってほしい」と思ったなら、地主はきちんと裁判所を通して、あなたに損害賠償を請求しなさい…ってことです。
反対に、地主がもしもあなたに殴りかかってきたり、「5万円を払わないと駐車場の門を閉めて車を出させない」というようなことを言ってきたり、後日5万円を取り立てに来たりした場合…
地主は、「自力救済禁止」の原則に違反していますから、反対に恐喝罪などであなたが地主を訴えることができる…ってことなんです。
月極め駐車場の場合は注意が必要
ただし、上記のケースは、あくまでも「世間一般の駐車場」の場合です。
これが「月極駐車場」となると、話は若干ややこしくなります。
月極駐車場の場合は、契約者が1か月単位で車を停めることを地主と約束して、1ヶ月分の料金を払っているわけです。
それなのに、あなたがそこに無断で止めてしまったことで、契約者の人が車を止められないということになってしまうと…
地主は意図せずして契約違反ということになり、地主が契約者に対して賠償をしなければならなくなります。
こうなると当然、あなたもその賠償額を負担する必要が生じますから、その額も大きくなります。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、「個人の駐車場での無断駐車で罰金5万円」というケースをもとに、法律の最も重要な原則である「民事不介入の原則」と「自力救済禁止の原則」の2つについてご紹介してきました。
要は、個人が勝手に作った決まりに反したからと言って、「個人が勝手に罰金を徴収する」…なんてことはできない、ってことなんです。
ただし、だからといって「駐車場が空いてれば駐車して良い」ということにはなりません。
これは、法律よりもさらに重要な「人としてのマナー」の問題だからです。
そもそも今回のケースでは、あなたが「コインパーキングの料金」をケチって、他人の土地に車を勝手にとめたことが原因です。
事前に駐車場の場所を調べておくなどして、このようないざこざの原因を作らないようにするのがベストです。