気分が落ち込んでいたり、鬱になったりすると、「外に出たくない…」って思いますよね。
でも、「そもそも自分は、どうして外に出たくないのか」…ということを考えてみたことはありますか?
今回は、鬱(うつ)の代表的な症状の1つである「外に出たくない」「人に会いたくない」という悩みにスポットを当てて、その原因と対処法を「認知行動療法」の観点からご紹介していきます。
どうして外に出たくないのか
うつの時、「外に出たくない」と感じるのは、「何をするにも面倒」だと感じてしまうためです。これは、うつ病の代表的な症状です。
でも、少し寛解を取り戻すと、「何をするにも面倒」という状態は癒え始め、日常の簡単な用事なら行なうことができるようになってきます。
でも、外に出られるようになって、次に沸き起こってくるのは…「知り合いに会いたくない」という悩みです。
「知り合いに会うかもしれない」という恐怖
せっかく状態が良くなって外出しようと思っても、「知り合いに会いたくない・知り合いと話すのが嫌だ」と感じてしまうと、結局はまた外へ出られない… って状態になってしまいますよね。
例えば次のようなケースです。
あなたが、外へ買い物に出かける用事ができたとします。
うつ状態が寛解し始めると、外へ出たり電車に乗ったり… などの社会生活が次第にできるようになってきますから、「お店に知らない人が大勢いる」という状態も苦痛ではなくなってきます。
でも、ここであなたは次のように考えます。
「地元のスーパーに行ったら、知り合いに会うかもしれない…」
このことを考えると、途端に行く気がなくなってしまい、せっかく寛解してもまた外へ出られなくなるわけです。
あなたにも、そんな経験はありませんか?
「〇〇駅前へ行くと知り合いに会うから、行くのをやめておこう…」みたいな。
しかしこうなると、全くの知らない土地でない限りは、誰かしら知り合いがいるわけですから、外出が全くできない…ってことになってしまいますよね。
認知行動療法が効果的
せっかく、外へ出たり電車に乗ったりすることができるようになったのに、「知り合いに会いたくないから」という理由でまた引きこもってしまっては、また「寛解」が遅れてしまうことになります。
そこで次に、あなたが「知り合いに会いたくない」と考えてしまう原因と、その対処方法について、「認知行動療法」の観点からご紹介していきます。
認知行動療法とは?
認知行動療法というのは、うつや不安障害の治療に効果のある心理療法で、うつ状態などで落ち込んだ時に、「自分は今なぜ落ち込んだのか」という原因を分析して対処する… という療法です。
今回のテーマで言えば…
「知らない人とすれ違うのはいいけど、知り合いと会うのは嫌だ」と、あなたがこのように感じたときに、「なぜ嫌なのか」という詳しい原因を突き詰めて考えて、対応していくのが認知行動療法です。
近況を聞かれることを「嫌だ」と感じる
おそらく、あなたが「外で知り合いに会いたくない」と感じる最大の原因は、「知り合いに近況を聞かれるから」ではないでしょうか。
「近況を聞かれるのも嫌だし、それに対して答えるのも嫌だし、なぐさめられたり、『がんばってね』とかのコメントを言われるのはもっと嫌だ…」
と、このように考えてしまうために、「知り合いに会いたくないから、外出したくない…」という状態になってしまうわけです。
自信のない人が自信を持つことは難しい
でも、ここで、「知り合いに会ったっていいじゃないか!もっと自分に自信を持とう!」…なんて言われても、なかなかそう簡単にはいかないですよね。
そんなとき、「自信がないならどうすれば良いのか」という問題に対し、明確な答えを提示してくれるのが認知行動療法なんです。
認知行動療法のステップ
認知行動療法の骨子となるのは、次の3段階です。
- 出来事があって、
- 考え方があって、
- 感情が起こる
例えば1で、「あなたが他人から説教される」という出来事が起こったとします。
2では、「説教されると自分に価値がないような気がする」という、あなたの「考え方」が原因としてあるわけです。
そこで、結果として、3の「だから落ち込む」という感情が湧き起こるわけです。
では、「知り合いに会うのが嫌だ」という悩みもこれと同じように考えてみましょう。
1で「知り合いに会う」というのが出来事です。
でも、ここですぐに「嫌だ」と結論を出す前に、「知り合いに会うのがなぜ嫌なの?」と考えてみましょう。
「外で知り合いに会う」、このことを突き詰めて考えていくと…「じゃあ、知り合いって、そもそも何なの?」という問題に行き着きくと思いませんか?
認知行動療法とは、このように「そもそも何が嫌なのか」という点を掘り下げて、解決策を見出していく療法なんです。
問題の本質を考えてみる
例えば、あなたが地元のショッピングセンターへ行った時に、会いそうな人の名前を思い浮かべてみてください。
Aさん、Bさん、Cさん…このうち、あなたの本当の友人は誰でしょうか。
もしもここで、「友人なんていない!」というのであれば…そもそも会話だってしなくてもいいはずですよね。
「最近どう?」と聞かれても、あなたのうつ状態の話なんてする必要はないんです。
適当に挨拶して、「じゃあまたね」と、その場を立ち去ればいいだけで、あなたには全く害がないのですから、「彼らに会うこと」を恐れる必要は何もないんです。
本当の友人なら会いたいはず
でも、もしも外出先で、あなたの本当の友人に出会ったらどうでしょうか。
本当の友人なら、きっとあなたのことを心から心配してくれていますから、「何か力になれることがあるなら、相談に乗るよ!」と言ってくれるかもしれません。
あなたはそれでも、「会いたくない」って思いますか?
外出を嫌がる理由が解消される
つまり、冒頭のテーマ「知り合いに会いたくない」という感情を細かく分析していくと…
「大して仲良くもない人から、近況を聞かれるのはすごく嫌だ。でも、本当の友人とは話をしたい…」って、なりますよね。
友人でないなら、外で会っても気にせず放っておけばいいし、本当の友人なら、会えばきっとあなたの力になってくれるはずです。
…と、このように考えていくのが、認知行動療法です。
どうでしょう。少し気が楽になりませんか?
ですので、あなたも、「知り合いに会いたくないから外へ出たくない!」と、「知り合い」を一緒くたにして考えるのではなく…
「どういう人なら会いたいのか」
↓
「誰が友人で、誰が友人でないのか」
↓
「友人でないなら、外で会っても放っておこう」
と、見方を変えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、うつの代表的な症状の1つである、「知り合いに会いたくないから外に出たくない」という感情が起こる原因と、対処法についてご紹介してきました。
うつで苦しむ多くの人は、「友人と友人以外」を混同してしまっています。
本当の友人に対しては、あなたは「会いたい」と思っているはずです。
反対に、あなたが会いたくないようなただの知り合いなら、相手をせずに放っておけば済む話です。
このように、「自分の感情をよく分析する」という認知行動療法は、うつの寛解にはとても効果的ですので、ぜひ、参考にしてみてくださいね!